大地震が来る前に、知っておくべき3つのこと
日本が世界でも有数の地震大国であることはよく知られている事実です。
具体的に挙げると、世界で起きる地震の10〜15%、マグニチュード6.0以上の大地震に絞れば20%が日本で発生しています。日本における人体に感じる有感地震の回数は年に1,100回以上で、これは1日あたり3〜4回の割合で地震が起こっていることを示します。
東日本大震災や熊本地震など、多大な被害を及ぼした大地震の爪痕もまだ残っています。建物に被害を及ぼす可能性がある震度5弱以上の地震が、2016年は1〜9月だけで30件も発生(気象庁調べ)するなど、この国で暮らしていく上で地震と無縁でいることはできません。
地震が建物に及ぼす被害
震度5弱以上の地震が発生すると、建物にはさまざまな影響があります。木造住宅と鉄筋コンクリート造建物におけるそれぞれの影響は、下記の表をご参照ください。
木造住宅 | 鉄筋コンクリート造建物 | |||
---|---|---|---|---|
震度 | 耐震性が高い | 耐震性が低い | 耐震性が高い | 耐震性が低い |
5弱 | ー | 壁などに軽微なひび割れ・亀裂が見られることがある。 | ー | ー |
5強 | ー | 壁などにひび割れ・亀裂が見られることがある。 | ー | 壁や梁、柱などの部材にひび割れ・亀裂が入ることがある。 |
6弱 | 壁などに軽微なひび割れ・亀裂が見られることがある。 | 壁などのひび割れ・亀裂が多くなる(大きなひび割れや亀裂が入ることもある)。瓦が落下したり、建物が傾いたりすることがある。倒れるものもある。 | 壁や梁、柱などの部材にひび割れ・亀裂が入ることがある。 | 壁や梁、柱などの部材にひび割れ・亀裂が多くなる。 |
6強 | 壁などにひび割れ・亀裂が見られることがある。 | 壁などに大きなひび割れ・亀裂が入るものが多くなる。傾いたり倒れたりするものが多くなる。 | 壁や梁、柱などの部材にひび割れ・亀裂が多くなる。 | 壁や梁、柱などの部材に、斜めやX字状のひび割れ・亀裂が見られることがある。1階あるいは中間階の柱が崩れ、倒れるものがある。 |
7 | 壁などのひび割れ・亀裂が多くなる。まれに傾くことがる。 | 傾いたり倒れたりするものがさらに多くなる。 | 壁や梁、柱などの部材にひび割れ・亀裂がさらに多くなる。1階あるいは中間階が変形し、まれに傾くものがある。 | 壁や梁、柱などの部材に、斜めやX字状のひび割れ・亀裂が多くなる。1階あるいは中間階の柱が崩れ、倒れるものが多くなる。 |
※気象庁「気象庁震度階級関連解説表」(2009年3月31日改定)
1995年に発生した阪神・淡路大震災で全壊した建物は約10万5,000棟に上りました。これは地震動の大きさや周期に加え、老朽化した建物や耐震基準を満たさない建物が多かったことが原因と考えられています。
特に瓦葺きの屋根の建物、柱と柱のあいだに筋交いのない建物の被害が顕著でした。また、土台部分が腐食や蟻害などで強度不足に陥っていた建物の多くも倒壊しています。なお、2011年の東日本大震災で全壊した建物は約12万9,000棟とより多くなりますが、こちらは地震ではなく津波による被害が大きかったことが明らかになっています。
地震による直接被害が東日本大震災より大きかった阪神・淡路大震災で全壊した建物は、1981年に改正された建築基準法の新耐震基準を満たしていないものが大半でした。以降、東日本大震災を含む大地震において「新耐震基準を満たした建物の倒壊は報告されていない」ことから、1981年以降に建てられた家は比較的地震に強いといえます。近年は築年数の経った住宅や古民家を購入してリノベーションするなど、家選びの新しい形がブームになっていますが、建物が建てられた時期についてはよく確認をする必要があるでしょう。
耐震診断を受けて建物の強さを確認!
もちろん、1981年以降に建てられたからといって安心してはいけません。雨風はもちろん、小さな地震や経年劣化など、さまざまな要因が日々建物を蝕んでいるからです。地盤や周辺環境、外周や基礎、室内から小屋裏・床下に至る各項目を、設計士や構造設計士にしっかり調査してもらい、「倒壊しない・安全な家」であることを確認してもらいましょう。
調査の結果、何らかの補強が必要な場合もあります。耐震補強工事の平均施工額は約120万円(日本木造住宅耐震補強事業者協同組合調べ)と決して安くはありませんが、そこに暮らす家族の安心・安全には代えられません。木造住宅より地震に強い鉄筋コンクリート造の家も同様に調査を行い、必要な措置を講じることが大切です。
また、大地震のときに発生する液状化現象によって、家の倒壊や傾いてしまうケースも多数報告されています。事前に国土交通省によるハザードマップを確認しておき、危険度の高い地域を避けて家を購入するといいでしょう。すでに住んでいる住宅の地盤が心配なときは、まず地盤を調査し、必要であれば液状化対策工事を行うのがおすすめです。
建物の内部に潜む危険と対策
大地震による人体への被害は建物内で多く起こります。
例えば阪神・淡路大震災でケガをした人の46%は「家具の転倒と落下」が原因でした(東京消防庁調べ)。食器棚や本棚などの家具は突っ張り棒、ベルト式の器具、L字型の金具などで壁や天井に固定することで、被害を最小限に抑えることができます。また、ベッドに倒れてきそうな家具や、倒れると扉をふさいでしまいそうな家具の配置替えをすることも大切です。上下に分割されている棚は連結し、扉がない棚には落下防止器具をつけるといった対策を行いましょう。
同じく阪神・淡路大震災の負傷者のうち29%はガラスの飛散が原因でしたから、ガラスへの対策も必要です。最も面積の大きい窓ガラスは、カーテンをするだけでも割れたときの飛散を防ぐことができます(厚手の生地でなく、レース地でも効果あり)。ホームセンターなどで販売されている飛散防止の透明なシートは、防犯効果もありますので一石二鳥です。
また、照明器具の見直しもポイントになります。特に落下の危険がある吊り下げ式の照明は要注意!専用のチェーンなどで補強するか、思い切って天井に直接つけるタイプの物に買い替えてしまいましょう。液晶テレビやPCのモニターも、倒れないように固定するマットなどが売られています。それぞれが揺れで倒れ、ほかの家具や窓ガラスを巻き込む被害も想定されますから、大地震で動きそうな電化製品や植木鉢などは、窓から離す工夫も必要です。